日々の残像V〜北鎌倉篇〜

大森元気 web log vol.5 - since nov.2016

北鎌倉・瓜ヶ谷50年前を垣間見る野外写真展

f:id:kitakamadays:20171022024642p:plain

去る10/20~22、「瓜ヶ谷の昔を歩いてみよう」と題された野外写真展が北鎌倉で開催されました。

f:id:kitakamadays:20171022024211j:plain

◆北鎌倉の南側に広がる「瓜ヶ谷(うりがやつ)」
鎌倉では「谷」のことを「やつ」と読みます。他に「谷津(やつ)」 とか「谷戸(やと)」という言い方・書き方もあります。ブラタモリの鎌倉の回に出ていた専門家の方が、「渋谷」の地名を見ると「しぶがやつ」なんて読んでしまうと冗談を言っていましたが。

f:id:kitakamadays:20171115080711j:plain
写真展のタイトルにもなっている「瓜ヶ谷(うりがやつ)」は、北鎌倉の南側にのびる小袋谷川(こぶくろやがわ)を中心とした山あいの地名です。

円覚寺明月院がある地域とは離れているし(駅の逆側ですね)、浄智寺から源氏山を経て大仏もしくは銭洗弁天へ至る「葛原岡ハイキングコース」からも外れているので、地元の人以外はあまり馴染みのない地域かも知れません。

でも実は北鎌倉~源氏山~銭洗弁天へ靴を汚さずに行けるのは瓜ヶ谷ルートで、本当は便利なのですよ。下の地図で、
・オレンジの線→ハイキングコース
・点線→瓜ヶ谷を通っていくルートです。

f:id:kitakamadays:20171115103842j:plain
引用元:鎌倉の葛原岡-大仏ハイキングコースを歩きました | あかとんぼいんよこはま

後日改めて書こうと思っていますが、瓜ヶ谷には「やぐら」群もあります。
「やぐら」というと鎌倉以外の人には「火の見やぐら」みたいな建造物を想像するかも知れませんが、全然別物で、石を掘った“横穴”のことです。古くは貯蔵庫として、鎌倉時代以降は墓所や仏像を彫り込んだ納骨窟・供養堂として使われました。鎌倉各所に残っています。 

◆瓜ヶ谷いま・むかし
f:id:kitakamadays:20171022024250j:plain

さて写真展は、50年ほど前に鎌倉の風景を撮影していた故・鈴木正一郎氏の作品がメインでした。氏の膨大な数の写真が寄贈され、それを1年がかりでデジタル修復したことにより実現したそうです。
f:id:kitakamadays:20171115091757j:plain
こんなふうに、かつての風景と現在の風景が並べて配置されていました。こういうの大好きなんですよね。吉祥寺のこういう写真集とか持ってたなぁ。

上の写真は、駅前を走る鎌倉街道を50mほど大船側に進んだところにあるT字路。瓜ヶ谷の入口で現在は製剤薬局になっています。右手の材木屋は外観変わりましたが現在も営業中。

f:id:kitakamadays:20171115095140j:plain
舗装される前、川の柵もなかった頃です。山肌は同じですね。f:id:kitakamadays:20171115094946j:plain
ちょうど会場となっている辺りから。カーブの先は田んぼ。
f:id:kitakamadays:20171115095046j:plain
田んぼからの風景はほとんど同じで感動です。

f:id:kitakamadays:20171022024320j:plain
北鎌倉に引越して来て、新しい自分の街・大好きな街がどのように変遷してきたかを知ることが出来てとても興味深かったです。

◆古い電柱はいつのもの? 

f:id:kitakamadays:20171115081111j:plain
上の写真は自分で撮ったものですが、下の写真の場所と同じところに立っています。相当年季が入っていますが、どうだろう、さすがに当時のものじゃないかなぁ、、。
f:id:kitakamadays:20171115081712j:plain
そんなふうに当時の痕跡を探すのもまた古い風景写真の醍醐味ですね。

◆造成時代、減っていく田んぼとホタル調査
鈴木氏の写真のほか、(写真を撮り忘れましたが)航空写真を年代順に並べて、終戦直後から現在までの北鎌倉を振り返る展示なんていうのもありました。

山あいにたくさんあった田んぼがどんどん宅地になっていく様子が見て取れました。

f:id:kitakamadays:20171115115014j:plain
上の写真&年表にもありますが昭和50年代(1960年代後半~1970年代にかけて)――朝ドラ「ひよっこ」の時代でもありますが――鎌倉の地に造成の波が押し寄せた時代でした。

鈴木氏が鎌倉のあちこちを膨大な枚数撮影したのは、失われる景色を残しておかなければという気持ちになったからだそうです。

f:id:kitakamadays:20171114191135j:plain
今も残っている田んぼや小袋谷川では毎年ホタルが見られます。僕が引っ越してきた初めての夏にも見られたのですが、かつてはもっとたくさんいたそうで、その調査の内容や結果も報告されていました。

f:id:kitakamadays:20171114191114j:plain

街灯が突然LEDになった夜、不必要なほどまぶしくなった風景を見て散々インスタに愚痴った僕でしたが、でもそれはあながちただの感情的な文句ではなくて、同じように疑問に思い、それについて調査したり声を上げたりしている人がいたのですね。

結局導入はされてしまったものの、きちんと議論されていたと知って少しだけすっきりしました。でもやっぱり明るすぎるよなー。

f:id:kitakamadays:20171115082528j:plain
稲刈り前に撮った田んぼの写真。僕のインスタで良く登場しますが(以前ブログにも書きました)無農薬の田んぼなんだそうです。だからホタルが飛ぶのですね。

現在農作業はボランティアの方々でやっているとちらっと書いてありました。ちょっと興味ありますね...誰でも参加できるのでしょうか?
それにしてもホタル、また増えてもらいたいなあ...。

www.polaris-art.com

さらにワークショップの行われており、近隣に在住の音響彫刻家・原田和夫さんともお話できました。不勉強でまったく知らなかったのですが、作品とお人柄に触れることが出来てよい出会いになりました。


◆以前は音楽学校だった東瓜ヶ谷緑地

f:id:kitakamadays:20171115085811j:plain

今回会場となった緑地は去年末から今年にかけて整備された緑地で、昔は音楽学校があったそうです。(後日追記:さらに前は相撲の高砂部屋だったそうです) ここ数十年は手付かずの状態だったようで、僕らが引っ越してきた頃には門扉の奥に荒れた茂みが見え、ちょっと雰囲気のある場所でした。(建物自体が残っていたかは、外からは判別できませんでした)

f:id:kitakamadays:20171115083515j:plain今年初め頃。整備が始まった頃の写真。

そしてその音楽学校が随分前に廃校になったあとは、どうなっていたか誰も知らないそうです。そんなことってあるんですね、、。ともかく、こんなふうに生まれ変わって、町の変遷の写真展会場に使われるのはぴったりの場所だと思いました。

f:id:kitakamadays:20171115090120j:plain

こちらにこの東瓜ヶ谷緑地について書いている方がいますが
『山ノ内東瓜ヶ谷緑地』鎌倉(神奈川県)の旅行記・ブログ by ドクターキムルさん【フォートラベル】
大昔はここに寺があったのではないか?とこの方は推測しています。

現在この地域にはお寺が一つもありません。あったはず、というのが有力だそうですが、跡はなく、場所については諸説あるみたいです。田んぼの裏手の山(西瓜ヶ谷やぐら周辺)と推測する人もいるようです。

どこにあったのか、地形などを見ながら推理して散歩するのも夢が広がりますね。

f:id:kitakamadays:20171022025025j:plain

入場無料、おみやげにポストカードも戴けました。この3日間はちょうど台風直撃で、雨の中での展示、3日目は恐らく中止だったと思いますがまた開催するような話があがっていたのでそのときをまた楽しみに待ちたいと思います。

なかなかなじみある地域ではないかもしませんが楽しめると思います。興味あるかたはそのときに是非。

 

追記

f:id:kitakamadays:20171115214008j:plain

ブログをアップしたその日に帰宅したら次回のチラシが入っていました。凄いタイミング!!