日々の残像V〜北鎌倉篇〜

大森元気 web log vol.5 - since nov.2016

センチメンタル

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引越しは今週末ですが、先日、転出届を出してきました。

この街に来たのは8年半前で、その頃のこととかをちょっと思い出してしまいました。30歳になったと同時にこの街にやって来た。変わっていないようで何から何まで変わったなあ。まずロン毛だった(笑)。まあそれはいいとして、僕の20代はただただ音楽に夢中で、それ以外はなんにも考えてなかったような気がします。ちゃらんぽらんで、世間知らずで、本当にろくでもなかった。

自分が幸せになることも、人を幸せにするということも、一体どういうことか何んにも分からずに。毎晩のようにライブハウスで大酒を呑んで、放浪や朝帰りも多かったなぁ。たしかにそういう生活が繋げてくれた人脈もたくさんあったし、そこから生まれたアイデアや作品もあった、怖いものなしのほうがアーティストとしてはオーラがあるように見えるのかも知れないけれど。いろんな人に迷惑をかけ、巻き込み、あっちこっち悩んで、答えは出なくて、刹那になって、お金もそれ以外も未来にたくさん借りをつくって...。それでどうにもならなくなった20代の終わりでした。

この街に来て、その後奥さんになる彼女と暮らし始めて、大げさかも知れないけれど、生まれ変わりたいと思った。うん、なかなかうまくいかなかったけれど。

遅すぎだけど、そしてまだまだだけど、いろんなことがだんだん整ってきた。仕事のことも、音楽に対するスタンスのことも。それで、幸運にもいい物件に巡り会えたから、この街を出る決心もついたのだと思います。

この杉並の家を初めて見に来た日(彼女は大阪から日帰りでやって来た)。線路沿いに咲き乱れた花々。帰りの電車のなかでこの部屋にしようと決めた。この街に住み始めた頃。5月の風。屋上からの夕焼け。バイトしながら色々バンドしてた頃。仕事や転職がうまくいかなくて右にも左にも動けなかった頃。もう一度音楽で一花咲かせたいと思ったこと。たくさんのレコーディングやミックスを家でした。ふたりでよく散歩した。一人で取り憑かれたようにジョギングした。ベランダで小さな菜園をした。笑い合った。ケンカもたくさんした。いろんなものを食べた。季節がいくつもやって来た。大好きな街だった。

いろんな思い出があとからあとから浮かんでくるけれど、これからも楽しいことが待っているはず。今は少しセンチになっているだけ。きっと想像した以上に素晴らしい未来が待っている。BGMで偶然流れたスピッツの「チェリー」が、発売日に買って以来こんなに響いたことはなかった。

 


スピッツ / チェリー